NMOSDの急性期治療はまずステロイドパルス、効果に乏しければ早めに血液浄化療法という流れが一般的かと思います。それでは、ステロイドパルスの効果をいつまでみて、いつから血液浄化療法やIVIgを開始したらよいのでしょうか?また血液浄化療法の適切な施行回数はあるのでしょうか?
NMOSD診療ガイドライン2023にはステロイドパルス治療(IVMP)が第一選択で、症状の改善が乏しい場合は早めに血漿浄化療法(PP)や免疫グロブリン療法(IVIg)を行う。重症例に対してはできるだけ早くPPを検討するとなっています。
Huang X, et al. (2021). Timing of plasma exchange for neuromyelitis optica spectrum disorders: A meta-analysis. Mult Scler Relat Disord. 48:102709. CC-BY-NC-ND 4.0
561件の文献からNMOSD患者228名を含む8件の観察研究を特定し、PPの有効性、施行タイミングをみている研究です。
平均年齢: 39 歳 (年齢範囲、7~85 歳)
AQP4-IgG : 162 例 (73.5%) が陽性
平均罹病期間: 46 か月 (範囲、0~395 か月)
初回PLEXまでの期間: 11 日
平均処理量: 1.5~2 L
Figure 3. PE開始タイミングとEDSSの関係(Huang et al., 2021より転載)

EDSS変化量
7日以内群: -0.64(95%信頼区間−0.93~−0.34)
8~23日群: -1.41(95%信頼区間−1.79~−1.02)
上記結果でPE開始の最適時期:発症(8)~23日後という結果がでています。
上記解釈にあたって、いくつか問題点があるかと思います。観察研究のメタアナリシスのため、重症例の早期介入による選択バイアスとして重篤な症例が≤7日群に集中し、もともと治療抵抗性だった可能性や、PE前にIVMPや他の免疫治療を受けていますが、これらの影響が考慮されていないことなどあげられるかと思います。
Kim SH et al., Clinical efficacy of plasmapheresis in patients with neuromyelitis optica spectrum disorder and effects on circulating anti-aquaporin-4 antibody levels, J Clin Neurol 2013;9(1):36-42. Licensed under CC BY-NC 3.0.
次に紹介する文献は、PEの試行回数の参考の目安になる文献です。
対象:IVMP(1g/5日)後でEDSS 7以上 or 視力が0.1以下のNMOSD15例
方法:抗AQP4抗体を血漿交換療法の前後で測定
主要評価項目:血漿交換療法直後および6ヶ月後の機能改善
副次評価項目:血漿交換療法後の抗AQP4抗体血清値の変化
年齢中央値:40歳、PLEX開始:発症後16±8日、PLEX:1~1.5倍量の血漿を隔日で置換
病型:視神経炎 8人/11回、脊髄炎 5人/5回、脳 2人/2回
結果:血漿交換による抗アクアポリン4抗体の除去効果

ステロイドパルスでは、14.3±15.2%、血漿交換では84.5±14.8%のAQP4抗体が除去されています。また抗体価の減少率は5回目以降は横ばいとなっています。
治療効果については、血漿交換終了時点(6回目)で50%が有意な改善を示し、改善は多くの場合、3回目の血漿交換後から現れています(median: 3回目、range: 1〜4回目)
まとめ:NMOSDに対する急性期血液浄化療法開始はできるだけ早め、遅くとも23日以内に開始する。血漿交換は最低5回で、3回目の血漿交換療法後から状態が改善してくる可能性を頭にいれてフォローすることが1つの参考になるかと思います。
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