進行期パーキンソン病におけるLCIG+オピカポンの治療効果とは?

パーキンソン病

今回は、進行期パーキンソン病患者において、レボドパ・カルビドパ腸管内投与療法Levodopa-carbidopa Intestinal Gel (LCIG)にオピカポンを追加する効果の検証がイタリア・フェラーラ大学病院(Movement Disorder Centre of Ferrara Hospital)から報告がありましたので紹介させていただきます。

オピカポンによるレボドパ換算量は0.5倍となっていますが、LCIGに追加することでレボドパ投与量の減量効果、またビタミン欠乏の予防効果が期待されます。

Colucci F, Gozzi A, Antenucci P, et al. Opicapone in Parkinson’s Disease on Levodopa‐Carbidopa Intestinal Gel Treatment: A Pilot, Randomized Study. Mov Disord Clin Pract. 2025. https://doi.org/10.1002/mdc3.70231, CC BY-NC-ND 4.0

方法:パイロット・ランダム化・前向き・オープンラベル・盲検エンドポイント試験(PROBE法)

対象:全員がすでにLCIG治療を受けていた進行期パーキンソン病患者で、LCIG導入後30カ月以内、夜間の無動(MDS-UPDRS part II の item 2.9 ≥1)、もしくは、朝または午後の無動(part IV の item 4.3 ≥1)

  • 登録期間:2022年7月~2023年12月
  • 登録患者数:22名
  • 全例PEG-Jの機械的トラブル(位置ずれ、閉塞など)は除外済

被験者は1:1で以下の2群にランダム割り付けされました:

  • addOPC群:LCIGにOPCを追加投与
  • nOPC群:LCIG単独継続

評価時点: ベースライン(T0)および12ヶ月後(T1)

評価内容:

 運動症状:MDS-UPDRS part III & IV、UDysRS

 認知機能:MoCA

 非運動症状:MDS-UPDRS parts I & II

 神経伝導検査:下肢の電気診断(sural nerve SAP)

 血液検査:ビタミンB12、葉酸、ホモシステイン

 LCIG投与量・経口薬量(LEDD)などの治療データ

結果:

登録患者:22名

  • addOPC群(OPC追加群):11名
  • nOPC群(非追加群):11名

年齢の中央値:70歳、MoCAスコア平均:24.91 ± 4.16

背景に違いがあり、addOPC群はLCIG導入年齢が若い(P = 0.012)、MDS-UPDRS Part I(P = 0.047)、Part IV(P = 0.013)がaddOPC群で高値でした。

12か月での評価として、addOPC群では以下の改善が認められました:

  1. MDS-UPDRS Part IV: 有意な改善
  2. UDysRS(ジスキネジア評価): 有意に低下
  3. LCIG投与速度: 有意に減少(0.40 ml/h 減
  4. MDS-UPDRS Parts I~III: 非運動・運動症状ともに改善
  5. ビタミンB12濃度: 有意に上昇(P = 0.015)、*ホモシステイン低下傾向(P = 0.053)、葉酸変化なし

有害事象として、4名(36%)がOPCを中止(平均15±2ヶ月後)、主因は幻覚となっています。また、いずれの群においても末梢神経障害の新規発症例はありませんでした。

中止群については、いずれも遅延追加群の患者で、病歴が長く、MDS-UPDRS Part IVが低く、MoCAスコアも低めでした。またPEG-J留置から間もない時点でOPCを導入した早期追加群では、運動合併症(Part IV)やOFF時間の改善が特に顕著でした。

項目OPC継続群(n = 7)OPC中止群(n = 4)P値
年齢(歳)67.0 ± 4.272.0 ± 4.10.072
疾患期間(年)12.4 ± 3.422.5 ± 11.1<0.05
LEDD(T0時点, mg)1469.0 ± 475.71159.5 ± 643.40.382
LCIG 朝の初期用量(mL)9.5 ± 2.67.0 ± 3.10.191
LCIG 持続投与速度(mL/h)2.8 ± 0.82.7 ± 1.00.744
MDS-UPDRS Part I(14.9 ± 4.713.3 ± 3.30.565
MDS-UPDRS Part II(21.4 ± 11.522.0 ± 7.70.932
MDS-UPDRS Part III49.4 ± 23.537.5 ± 7.70.358
MDS-UPDRS Part IV10.6 ± 1.47.5 ± 1.3<0.01
UDysRS25.6 ± 14.224.5 ± 4.00.890
MoCA26.7 ± 3.519.0 ± 4.6<0.05

まとめ:

実際の臨床場面では、LCIG流量の多い症例、LCIG使用中のoffがおきてしまうような症例、ビタミン欠乏が確認またはフォローで危惧される症例、もともと糖尿病などの末梢神経障害をきたしやすいような疾患が合併している症例など、MoCAの低下がないかどうかを参考にしつつ、罹病期間が長い症例でのOPCの追加は幻覚の悪化について十分に配慮する必要があるかと思います。

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